鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

追憶の母 7

母の実家の弟が、ついに軍隊に獲られた。父が知って任地から義弟に手紙を書いたそうだが、内容はけっして手柄を焦るな、なんとしても生きて戻るように、と言い聞かせたらしい。しかし、彼は戦地にやられて戦死した。手柄を焦ったかどうかはわからないが、父…

追憶の母 6

父が召集にあって軍隊に入ってしまった後も、お国のために仕事ができなくなったからか、召集にあった者は仕事をしているとみられたのか、鉱山の社宅にはそのまま住むことを許された。太平洋戦争に突入して、若者が次々に軍隊に取られて行く。社宅の長屋は留…

水害の恐怖 伊勢湾台風が襲来

令和元年で、なんとなくめでたい気がしていたのだが、巨大台風19号が我が国を襲い、ふと、60年前の伊勢湾台風を思い出した。狩野川台風を例に取られて、伊勢湾のイの字も出なかったが、その次の年のことだったと思う。死者、行方不明者5000人以上を…

追憶の母 5

鉱山の社宅は、平屋の長屋だった。五家族ほどが入っていたらしいが、中は三畳と六畳の二間で台所は土間の片隅。風呂はなくて入りたければ鉱山町の風呂屋へ行く。幸い風呂屋や商店街までは近かったようだ。当時としては風呂のない家庭がほとんどだったので、…

追憶の母 4

母が実家で髪結いや婚礼の仕事を行うようになって10年近くが過ぎた。その間に数歳下の妹が近くの農家に嫁に行った。傷痍軍人の旦那さんであったが、見かけではどこが悪かったのかはわからない。実家よりは豊かで牛がいた。しかも嫁ぎ先の一家は本人、舅、…