鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

猛禽チョウゲンボウ 1

我が家のすぐ横に300坪ほどの空き地がある。ずっと昔は桑畑だったが、いつの間にか宅地になり杉畑医院という産婦人科のお医者さんの医院兼住居となった。道路側が医院で二階が二名ほど入院できる部屋、そしてずうっと奥が先生たち家族の住居、その裏が広大なお庭であった。庭の回りは金属のフェンスで囲われ、内側にカイヅカイブキの生垣が植えこまれていて、中は見えない。我が家は庭の裏手になるが、二階に上がって窓から覗くと先生の庭園が丸見えになる。産婦人科だったが、田舎なのでその科にこだわっていては患者が少ないので、ちょっとした病気なら診て下さる。子供の時は風邪を引いただの、お腹が痛いだのと言って、よく診てもらった。その杉畑先生も寄る年波には勝てず、医院を閉じてしまわれ夫婦で施設に行かれたそうな。数年はそのままになっていた家屋敷も、ある時解体されて立派な庭も業者が来て梅やしだれ桜、何十万もしそうな五葉の松なども抜かれてトラックで運ばれて行った。大きな青みがかった岩も造園業者が持って行ってしまい、すっきり更地になってしまった。

すると、空き地に草が生えてきた。初めは遠慮がちに、だんだんとセイタカアワダチソウが旺盛にはびこりだし、ブタクサも交じり、すぐ近くの里山からエノキだのケヤキだのが飛んでくる。ほったらかしの空き地だからあっという間に林みたいになり、そこへ桑の木が顔を出し始めた。

桑は成長が早い。茂ってきて夏は涼しいが秋が困る。大きな葉をふるって、路地を履いても履いても落ち葉でいっぱいになる。我が家の北側に覆いかぶさるような勢いだ。小さな棚にシダの鉢を並べていたが、その周りも葉っぱだらけで困った。棚の上段にインコの食べ残しを置いて、スズメに振る舞っていたが、桑の木がかざすので切ってやらねばならない。スズメは毎日来て餌を食べるのだが、ある秋の中頃、ピタリ、と来なくなった。何日たっても一羽もこない。不思議に思っていると、林の中からキィキィキィとけたたましい鳴き声がする。葉の落ちた枝の間から透かして見ると、なんと、チョウゲンボウがいた