鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

イヌシダ通信 子宝教会

伝書鳩ハト子、東田ルリ子さんの教会を取材する。

「ルリ子さん、今日はあなたの行っている教会が、いつも子宝教会だ、とおっしゃっていることについて取材に参りましたのでよろしくお願いします」ハト子、神聖な教会の取材なので神妙である。「それはごくろうさまです、さあ、こちらで写真をごらんください」ルリ子さんはハト子を居間に通し、壁の写真を指差す。そこには川のすぐそばに赤い十字架を屋根に掲げた教会が凛として建っていた。川は五木川。教会は八馬福音ルーテル教会という。

ルリ子さんの話では、五十年近く前フィンランドの宣教師夫妻が来日して宣教をはじめ、八馬に家を借りて教会を作ったそうだ。夫妻はまだ若く子供がいなかったが、その後フィンランドに帰国するまでに5人の子供が生まれた。信徒も少しずつ増えていき、教会の屋台骨もしっかりしてきたと宣教師さんは日本人の牧師さんと交代した。上畑牧師である。彼ら夫婦は結婚して数年たっていたが子供がいなかった。ところが就任して5年の間に二人の子がバタバタとできた。子供たちには都会で教育を施したいと、また交代である。今度は日本人牧師が見つかるまで、と北欧からレモン夫婦が宣教師としてやってきたが、やはり子供はいなかった。だが、すぐ夫人に赤ん坊ができて大喜びである。彼らは二年ほどで日本人伝道師と交代した。忙しい教会だ。蔦山先生夫婦も若かったが結婚して二年ほどになるらしかった。子供はまだか、といつも言われる、と奥様が言うので、ルリ子さんは、大丈夫です、歴代の先生方は着任してすぐに赤ちゃんができましたから、蔦山先生ご夫婦も授かります、と予言者のごとく励ました。

そして、それは的中して1年後に赤ちゃんが授かったのだ。なんとめでたい教会なのか!あまりオメデタ続きなので、子宝の功徳がある、と宣伝しようか、などと教会の長老に口走ったほどだ。牧師先生方だけではない、信徒も若い人は結婚していく。そして、みなさん子供に恵まれる。その子が大人になり、また結婚し子供を授かる。教会から都会に出て行ってしまうので、赤ちゃんは他所の教会のお世話になるが、八馬教会のお手柄には違いない。蔦山先生の次の林先生にはすでに小学生のお子さんがいたし、その次の一葉先生ご夫婦は、子供さん方がすでに独立、と子供を産む時期などずっと前に過ぎた方たちだが、きっとお子さんたちが結婚したりすれば子宝を授かることだろう、とルリ子さんは言う。

「へー!、めでたい教会ですねえ」ハト子鉛筆をなめなめ記事を書きながら感心する。「牧師さまたちがそんなにおかげをいただくなら、一般の方たちだって礼拝に出席して祈れば、子宝をいただけるのでは?」「そうですね、きっと、そう思います」ルリ子さんはそう言ってうなずいた。