鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

ツバメのヒナを拾った話 1

今から12年ほど前の話であるが、ある夏の日、八馬教会の蔦山牧師から電話が入った。ツバメが協会の前をヒョコヒョコ歩いている、あんたんとこの入口に巣をかけている家族の一羽だろうからなんとかしろ、と近所の人から言われたそうな。先生は巣の中を確認してヒナは全部いる、と答えたのだが、いや、教会の前をウロウロしているのだから、お宅のヒナに違いない、と頑強である。先生は根負けして、では当方で善処します、とヒナを引き取った。そして、東田さん、頼むわ、あんたベテランだから、とヒナは我が家に直通だ。仕方がないのでヒナを受け取り、段ボールの寝床を用意してからヒナを観察した。羽は生えそろっているが、飛ぶには少しきびしいか?。とりあえずケガはなさそうなので、そのままミカン箱の寝床に入らせて上から風呂敷をフワッとかけておいた。

それから餌の確保のため20キロ北の富谷市まで車を走らせる。その町のペットショップまで行かないと、ヒナに与える虫が手に入らない。最近では近くのホームセンターにも売っているが、当時は富谷市に行かないと売っていなかったから、一匹1円のミルワームを買うために金以外に時間と労力が必要だ。高い餌である。無事に虫を三ケース買って急いで帰る。200匹入りだから全部で600匹。三日か四日分だが、エサが手に入ってもこれからが大変だった。ヒナはかなり育っている。もう、親から怖いとか危険などを教わっているだろう。餌を見せても口を開けてくれるか怪しい。

帰るとピンセットを火で消毒してから虫をはさみ、膝に乗せたヒナに見せたが、全く口を開けない。やっぱりね!しかし、この頑固さに負けてはならない。でないと死がすぐそこに待っている。口ばしの隅に付いている黄色いゴムの隙間に餌を強引に押し込む。口に入ればムニャムニャと飲みこんでくれる。だが二匹目を見せても、やはり知らん顔だ。まだ食べ物と認識してくれていない。二匹目、三匹目と一匹食べさせるのも大骨折りである。五匹食べさせて箱に戻す。1時間後にまた同じことを繰り返し、夕方までにヒナの世話で奮闘した。

夜、蔦山先生が野鳥の育て方を検索した、と言ってコピーを数枚届けて下さる。ついでに満足そうなヒナの顔を見て帰って行かれた。そのコピーが大変役に立ったのは言うまでもない。ヒナをいかに栄養失調から救うか、という記事が書かれていた。