鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

ツバメのヒナを拾った話 5

蔦山先生から二度目にあずかったヒナは、ミルワームを口ばしに押し込んで奮闘した結果、ちょうど1日で口を開けてくれるようになった。友人がやってきてヒナを覗きこみ、「口を開けるの?」と心配そうに言う。開けないのよ、と答えながらミルワームをピンセットではさんで見せる。「虫を揺らしてみたら?」と友人の忠告。わかった、とピンセットの虫をヒナの前でユラユラさせた。とたん、ヒナがパカッと大きな口を開けてくれた。

おおっ!思わず声が出る。閉じないうちにミルワームを押し込んだ。これで餌やりがしやすくなる。ヒナはパクパクと食べてくれ、二時間おきくらいに食べたいだけ与えて初日だったので夜の10時ごろまで食べさせた。それから、ミルワームの入れ物をひっくり返して虫とフスマをより分けた。家にはイヌがいたのでその子のドッグフードを一つかみ貰って、すり鉢で潰しミルワームのパックに放り込む。フスマの代わりに栄養たっぷりのドッグフードを、虫の餌にするのだ。そして、エサには水も数滴落としておく。水が乾いたら必ずまた落としておく。このミルワームは三日間は使わない。フスマ入りの虫も三日くらいは食べさせても大丈夫。

さて、ヒナはチーちゃんと呼ぶことになり、すぐに段ボールから出て部屋の洗濯物干しのツナに止れるようになった。「おまえ、そこから食べな」とツナに止ったヒナに虫を見せる。早く、早くと口を開けてせがむチーちゃんにミルワームを与えた。短かった羽やツバサはどんどん伸びて、ツナの上で羽ばたきをし始めた。ドッグフードを食べた虫を与え出すと、チーちゃんはますます元気になり、とうとう部屋の中を上手に飛べる様になった。おいで、と言えばパアっと飛んでくる。とてもなれて可愛いが、そろそろ放鳥時だ。口ばしに黄色いゴムが付いている時に放鳥すると、他の大人のツバメが面倒を見てくれるらしい。いくら可愛くても心を鬼にして放そう!でないと、独り立ちできなくなる。人間は虫のとらえ方とか危険を回避する方法など、チーちゃんには教えてやれないから。

ちょうどあずかって1週間。我が家の横の300坪もある空き地は草ボウボウで、ツバメがたくさん乱舞する。放鳥にはもってこいの場所だった。玄関を出た所でチーちゃんを指に乗せて、背伸びをして高く掲げる。5分もしないうち、大人のツバメたちが気づいた。「まあ、あんた、何してるの!だめだよ、そんなとこにいては!」と言っているように、チチチチ、チチチチと鳴きながらヒナの上を旋回し、一羽がチーちゃんの上を掠めて飛ぶ。何回かそれをやられて、ついにチーちゃんが飛び上がった!大人のツバメにヨタヨタと付いて行く。

「元気でね!南の国へ行くんだよ!」と声をかけた。チーちゃんは離れた電線の上に止って、他のツバメの世話になることができた。前に居候していたピーちゃんの二の舞にならず、良かったと思っている!