鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

イヌシダ通信 南夜濁国の狂乱

イヌシダ通信社本部に夜濁国半島に特派員として派遣されていた新米の隼タカオが戻ってきた。今回は政府がついに南夜濁国に対するホワイト国扱いを中止することが決定したので、新米であり貴重なハヤブサを案じるため、コウノトリ嘴子についでの対応策である。タカオは大いに不満であったが、これはイヌシダ通信社が決定した事柄なので彼の国のようにクレームをつけて不買運動をするわけには行かない。他の派遣員たちにも続々と帰国命令を出している。残るのは雀チュン太郎たちスズメ班と鴉カア𠮷たちカラス班の二組で総勢10羽だ。彼らは何年も半島に駐留するベテラン駐在員で、しかも日本では絶滅危惧種に入っていない鳥たちであった。スズメは最近、環境の変化で数を減らしており、何年か後には准絶滅危惧種に入るかもしれないが、とりあえずコウノトリハヤブサとは比べられない。

「ぼくは残って取材したかったです!どうして戻されたのですか、ハト子さん。納得がいきません!」タカオは頭から湯気を出して文句を言っている。「危ないからに決まってるでしょ。三品目の輸出規定を厳しくする、と言っただけで、南夜濁国は国民上げての大騒動なのよ。それがついにホワイト国除外に決定したのだから、あんたみたいな貴重な鳥を置いておけないわ。貴重な鳥以外の特派員や駐在員もスズメとカラス以外、すべて引き揚げさせるのよ。何か起こってからでは遅いからね。日に日に狂乱がひどくなるでしょ?」ハト子難しい顔だ。「そりゃすごいです!夜になったら住民がロウソクなんか持って何万人って集まって、気勢を上げるんです!悪口雑言を書いたプラカードを掲げてね。あんなことをすればヤブヘビになるってことがわからないんですかね。あれがモノを頼む態度ですか!ホワイト国除外で終わると思ったら大間違い。次は経済制裁という大ナタが振るわれるかもしれないのに」「学大統領は考えがある、覚悟して置け、なんて言ってたじゃないの。どんな考えかしらねえ」「もしかしたらテロとか、大使館や領事館への暴動ですか?不買運動やロウソクの先導は大統領の一派でしょ。暴動で大使館員たちに害が起これば、怒った国民のせいにするんでしょうね」「よくわかっているわね、特派員をやってきただけあるわ。とにかくイヌシダ通信社だけでなく、あの国に支店を出したりしている企業はこっそり社員や家族を帰国させているのよ。いよいよ信用保証を取りやめる準備ね。不買運動どころの騒ぎじゃなくなるわ。モノが買えなくなるわよ」「南夜濁国の通貨ヴォンが紙くずになりますね」「あっという間に外資が引き上げて、デフォルトよ」「今までは日本が援助していたけど、もう頼めませんよね」「麦国に頼むよりほかないわね。南北の統一はしやすくなるかもしれないけど」「国民の狂乱エネルギーはすごいんです。あのエネルギーをほかに向けられないのですかね。一丸となって良い方向に進めば、本当に立派な先進国になるでしょうに」

スズメ班とカラス班の駐在員たちには危険手当が大幅にアップされることとなった!