鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

イヌシダ通信 南夜濁国の焦燥

伝書鳩ハト子の部屋に、南夜濁国駐在員のスズメ班からの伝達を持って山鳩キジ子が入ってきた。背中にガラケーをしょっている。福岡から帰ったところだそうだが、デスクに言いつけられたとかで一束の記事を渡してくれる。キジ子も彼の国から呼び戻された口だ。なんでも家庭を持っており小さな子供が三人もいるから、早くに戻されたのだ。「チュン太郎さん達は大丈夫かしらね」ハト子、かなり心配そう。「大丈夫ですよ、ベテランですもの、まあ、首都はデモ隊で身動きが取れないほどですけどね」「今日、レジストの輸出を経済産業省が許可したのよ」「そうですってね、でも、南夜濁国の政府は礼も言わず、相変わらず厳格化の処置を解け、の一点張りです。本当に、礼儀知らずだと言ったら、盗人たけだけしいのは向うですよね。日本大使館の入り口に、徴用工人や慰安婦像をデンと設置して、自分たちの国をわざわざ貶めています。いままでどれだけ日本に世話になったか忘れてしまって、もっともっとと、たかることばかり考えていたのに、急に阿辺川首相の態度が変わったので焦っているのです」キジ子怒り心頭の様子。「礼儀などどっかに追いやってしまったようね。国民全体が平静を失っているのよ。鎮静剤でも打ってもらった方が良いわね。牙をむいて唸るイヌと、尾を振って喜んでくれるイヌとどっちが可愛いと思う?キジ子さん」「そりゃ、尾を振ってくれるイヌですよ。可愛いと餌も良い物をたくさん上げたくなるし、オヤツだって色々与えたりオモチャなんか買ってやって、遊んであげたくなっちゃいます!」「でしょ、それがニンゲンや動物の感情ですよ。なのに、何か気に食わないことがあれば、すぐわめき倒して不買運動だの、デモだのと説得力がないばかりか、かえって相手を怒らすような態度に出るのよ」「そのわりに、駐日大使を召還させませんね!今にも国交断絶を叫びそうな勢いなのに!」キジ子不思議そうである。「国交断絶なんかしたら、もうダニのようにたかって甘い汁を吸えないじゃないの。それはできないわね」ワタシは縁を切りたい、と叫ぶキジ子だが、まあ、まあ、とハト子宥める。「東田ルリ子さんがね」「あ、ハト子さんのニンゲンのお友達ね」「そう、その方の知り合いが南夜濁国にこちらの小さな銀行の支店を出していて、支店長をしているのだけど、本店から大口の顧客の貸付金を回収しろ、小口はそのままだが大口はこっそり剥がしていけ、と命令されたのだ、という話なのよ」へえ、とキジ子が驚いた顔をする。「それは、いつなん時我が国大手の信用保証破棄が下されるかわからないからですか?」「あたしは予防措置だと思っている。少しづつ、手を回して知らないうちに国中の債務者が、貸し剥がしにあっていた、気づいたころには南夜濁国の基軸通貨が国から消えていた、なんてね」「それは麦国の通貨ダラーですね」「まあ、円やユーロも該当するけど」「以前に通貨危機が起きた時は、国民にキンや宝石などを供出させてしのいだし、日本も助けましたね」「今回は金も宝石もないんじゃないの?景気が悪くなって長いものね」「今度は日本も助けませんね、盗人たけだけしい国だそうですから」

キジ子はスマホからガラケーに替えたのだそうだ。彼の国に対するささやかな不買運動なのだとか!