鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

ショパンに魅かれて原作マンガを見る

アニメ、「ピアノの森」を見て原作を読みたくなった。原作と言えば聞こえが良いけれど、何のことはない大人向け週刊マンガに連載されていた物のコミックである。全部で26巻、クライマックスは終りの方だろうが、主人公の一ノ瀨海は10歳から登場する。小学校4年生で超貧乏なシングルマザーの子供だが、森の傍にある家の裏にグランドピアノが捨ててあって、それをオモチャ代わりに大きくなった、ピアノの天才児という設定だ。ピアノの素質を見出したのは小学校の音楽教師である阿字野先生。若いころは天才ピアニストだったが、交通事故で左手を損傷し一線を退いたというワケアリ!彼が人生のすべてを投げ打って、カイを育成する。そして17歳でショパンコンクールに挑戦させるのだが、アニメで見たあたりから読もうと思い、14巻から買ってみた。推理小説ならとてもできない相談なのだが、アニメでラストはわかっている。このあたりでコンクールが登場するだろう、と買って読んだ。開いてみて驚いたのは絵が非常に上手く綺麗だという事。特にピアノの絵。ピアニストの話なのだからピアノを描かないと話にならない。しかし、ピアノはなかなか難しく鍵盤の数は多いし、それを弾いているシーンとなると、もう、ひとコマ描くだけで何時間も潰れそうだ。なのに、コマの大半にフルコンサート型グランドピアノが出てくる。あまり上手に描かれているので、これはどうやらパソコンを使って製作をしているらしい、と思った。世界的な権威あるピアノコンクールなので、予選が多く参加者も何百人だ。予備予選でまず篩にかけ、80人まで絞り一次予選で30人、二次予選で12人となって最後のファイナルという本選に臨むのだ。主人公を取り巻く出場者たちが次々と演奏して行くが、ショパンの名曲が司会者から紹介され、多くの審査員からも曲名をブツブツ呟かれるので、かなり専門的な話になる。それを見事なタッチでマンガのコマに表されて、音が出ているのでは?と思いたくなるほど動きがあって感心した!ショパンの曲はとても多いが、どれもきらびやかで素晴らしい。しかし、なかなか難しい曲ばかりで、私もワルツの数曲と簡単なマズルカくらいしか弾けない。幻想即興曲はもう三年以上、ほぼ毎日弾いているがいっこうに上達しない。それどころか下手をすると手を痛める。腱鞘炎になってしまうのだ。傷めるとしばらくは別の曲しか練習できない。だから上達しないが、まあ、好きな曲だから弾くのだ、と割り切っている。一ノ瀨カイは意地の悪い審査員からもすり抜けて、とうとうファイナルに到達し、課題曲のピアノ協奏曲1番をワルシャワフィルと共演して優勝するのだ。協奏曲を演奏しているピアニストと管弦楽団や指揮者の情景が、とても事細かに描かれて、非常に巧みな技巧の漫画家だと思う。結局、14より前のエピソードも知りたくなり、現在、1巻から買って読んでいる。マンガだから30分ほどで読めてしまうが、作者は連載を休んだり中断したりして16年もかけて最終回にこぎつけたらしい。だから最初の巻と後半では登場人物の絵柄が変わってきている。最初は大雑把だが後半は緻密で綺麗になってきていた。16年も描いていればやむを得ないが、天才児がピアニストにまでになるハナシは、音楽に興味のない者には面白くないかもしれないが、しかし、面白いマンガだと思う。