鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

タンスの上のホコリダニ

家具の上はホコリがたまりやすい。特に黒っぽいタンスやピアノの上はホコリがよく目立つ。我が家のピアノはワインレッドの猫足型で、その横にくっつけるようにして深い引き出しの整理ダンスを置いている。タンスはピアノより先に買ったものだが、奇しくもピアノと同じ色だ。どちらも週イチで埃取りを使ってナデナデしている。毎日1時間はピアノを使うが、そう目立つほどホコリなどはつかなかった。ところが、三年前の秋口の頃、ふとピアノのフタを開けようとしてバカにホコリが多いのに気が付いた。いつもこんなに付かないのに?ブツブツ言いながらホコリ取りで撫でまわす。翌日、フタに昨日と同じくらいホコリが付いていた。子供がいるわけじゃない。ヒトも一人だ。この部屋はいつもと同じ状況なのに?三日目、またまたホコリに目が行く。ちょっとちょっと!横のタンスにも目をやる。ピアノよりも数倍多いホコリがたまっていた。どうなってんだ?ホコリをぬぐわないでピアノの前に座ってホコリをじっと見た。一瞬、えっ?と声を出す。ホコリが動いたような気がした。さらに顔を近づけて凝視する。じわじわと、やっぱり動いている!今度は虫メガネを持ってきて観察した。蠢いているのはホコリではなく、虫だ!今度は電話に飛び付いて保健所に電話をした。

「ピアノやタンスの上にホコリそっくりの虫がたくさんいます」と早口で説明。「ではそれを捕まえて持ってきてください」虫の大きさは1ミリの10分の1ほど。「どうして捕まえるのですか」「セロテープにくっつけてもらえば良いです」「死にますよ」「かまいません」なんと安易な。しかし、言われたようにセロテープでくっつけて、それからティッシュでビニールの小袋に掻き出して入れ、生きたまま捕獲した物も用意する。虫だとわかった上はホコリ取りでナデナデなどできない。掃除機で念入りに吸い取っておき、畳の上もいつもより丁寧に掃除した。心の中で、これはひょっとして話に聞くダニではないだろうか?と思った。ピアノやタンスが濃い色だったからわかったけど、畳や布団の上だと、絶対にわからない。その日は夕方に近かったので、明日、行かせてもらう、と答えておいた。

保健所は隣の市にあり、我が町から15キロほどの距離だ。用意した虫を持って電話を受けてくれた係員に会い、虫を渡した。少々お待ちを、と奥へ引っ込んだ職員は数分して顕微鏡を持って出てきた。覗いてみてくれ、と言われ、覗いてみる。セロテープの虫が拡大されて映っていて、気味の悪さにうめき声をだしたくなった。写真で見た事のあるダニだ。「ホコリダニですね。環境が良くて異常発生しているのでしょう。ちょうど今、シーズンですから」ヒトに噛みついたりはしません、と言われたが、そいつの死骸が舞い上がって人の鼻や口に入りアレルギーを起こしたりするらしい。乾燥した場所や35度以上の温度だと嫌がるようだ。ピアノの場所は超湿気屋敷で、ピアノの内部に乾燥器を設置している。油断をすると鍵盤が上がってこなくなるくらいだが、ここしか置き場所がない。

ダニはそれから数日、獲っても獲っても出てきたが、ピアノの調律に来た楽器店が鍵穴や蝶番のサビ落としをしてくれた。ついでダニ用の乾燥剤をピアノの内部にぶら下げてもらってから、とんと出なくなった。やれやれ!