鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

麦国の沈黙 

伝書鳩ハト子、王冠ウイルス性新型肺炎を取材する。

ハクトウワシ バルドがエメラルド王女号の取材で来日したついでに麦国のインフルエンザについてイヌシダ通信社で対談をしてくれることとなる。

「バルドさん、お久しぶり、わざわざ来日、ご苦労様です。きょうはご無理を申し上げました。麦国の感染症対策はいかがですか?」ハト子、例のごとく鉛筆をなめなめ上目遣いに巨大なハクトウワシを見上げる。ハクトウワシは麦国の象徴だ。白い頭部に体は茶色。イヌワシのような体系だが、凛とした風情は高貴でもある。「こちらこそお久しぶりです、いや、日本にはエメラルド王女号では、本当にお世話になりっぱなしで、麦国のニンゲンのメディアは辛辣なことばかり言っていますが、だったらもっと早く迎えのチャーター機を出せばよいのに、おかしなことを言う、と鳥獣メディアはこっそり言っています」「日本政府は平和ボケで、危機感が薄いかもしれませんが、船で感染者を初めに出した責任は誰が取るのでしょうね?あの船は麦国の物でしょ。こきおろしている場合ではないのですがね。それに、あなたの国、インフルエンザが大流行しているそうじゃありませんか。死者も二万人近いとか」「それなんですよ、ハト子さん。実はインフルの中の相当数に王冠ウイルス肺炎が混じっている、などと専門家が言い出しましてね。2500万人も感染しているというのに、王冠ウイルスが混じっていたりしたら大変です」「ありえる事よね、わたしは麦国の王冠患者があまりにも少ないと思っていたのよ。15人からちっとも変化がないんですもの。麦国は3億人の国民がいて、観光客も多いわ。王冠ウイルスを発生させた上国の人たちも日本同様に、大勢行っているはずよ。上国が隠している間に保菌者がたくさん入国しているわよ!」ハト子、少々アタマに来ているよう。バルド、ツバサで頭を掻く。「おっしゃる通りです。たぶん、麦国の政府も上国同様、本当の数字を隠しているのかもしれません。本当のことを発表したら、選挙を控えているカード大統領は旗色が悪くなりますからね!言えないでしょう」「麦国の医療費は保険がないから、貧しい人々は死にそうになるまで医者にかからないそうね。救急車を呼ぶと目の玉が飛び出るほどの請求書が来るって聞いたわ。子供がオデコをスポーツで切って、三針ほど縫ってもらったら30万円も請求されたそうよ」「ええ、ですからインフルエンザでもほとんど家でじっと寝ていて直すのです。インフルエンザにはタミフルリレンザなど、良く効く抗ウイルス薬があるのですが、そんな薬を使って貰ったらどれほど高額になるやら知れた物ではないです」「超大国らしからぬ有様ね」「それを言われると返す言葉もありません」ハクトウワシは小さくなる。そういうわけで、麦国は日本以上にウイルス感染症で振り回されているのだ、とバルドは言った。「この騒動は十年前の新型インフルエンザを思い出すわね、世界中がパニックになったわ。パンデミックだと。今回はもうパンデミックに突入していないかしら」「わかりません、しかし、麦国のインフルの1パーセントが王冠肺炎なら、間違いなしにソレになりますよ、麦国のニンゲンメディアが日本を攻撃するのは、目を逸らさせる為、と思いたくなります」バルド、またまた頭を掻く。そもそも、上国が早く公表しないからこういう事になるのだ、と二羽の意見は一致した!