鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

日本の国花 サクラ

サクラの季節となった。ニュースでどこそこのサクラが咲いた、とかあちらは三分咲き、とかこちらは満開だとか、例年ならこういった平和な情報が流れて行く。ところが今年は花ではなくコロナの話で持ち切りだ。、王冠、太陽の輝きを表し決して縁起の悪いものではない名詞なのだが、誰が命名したのかウイルスの名前になっている。王冠に似ているので付いた名らしいが、今や世界中を恐怖に陥れている。サクラなどという名前にならなくて良かったが、もし似ていたら付けられたかも?サクラの代表は何といってもソメイヨシノだ。大きな花びらに薄桃色の華麗な姿で、地域地域、一斉に咲き誇る。サクラの王様である。このサクラは江戸時代、染井村の植木職人が見つけた雑種のサクラで、エドヒガンとオオシマザクラのあいのこ、ということだ。なんでも植木屋さんは吉野さんという屋号だったらしくソメイヨシノと呼ばれるようになったとか。その吉野さんが接ぎ木して殖やし、たちまち全国に広がった。だから、日本の、いや世界中のソメイヨシノは全部同じ個体。接ぎ木で殖やされて広がったので、ほぼほぼ一斉に開花する。

ソメイヨシノの難点は寿命が短いことと、病気にあまり強くないという点。だいたい60年くらいで枯死するし、少し環境が悪いと天狗巣病が付いたりして伐採する羽目になってしまう。なのに、ニンゲンどもは川沿いの堤防などにぎゅうぎゅう詰めで植えたりして、花のことを考えてくれない。ソメイヨシノはすぐ大きくなるので感覚を相当取って植えないと、木と木がくっついて可哀そうなことになる。公園などにサクラを植えようという企画が持ち上がると、バカの一つ覚えみたいにソメイヨシノである。その花しか知らないのか?サクラにはおびただしい種類があるというのに。60年たったら切らなきゃならない。60ねんなんてアッと言う間だ。千年以上も生きるエドヒガンなどヤマザクラの系統を植えて欲しいものである。江戸時代前期の浮世絵やそれ以前の日本画に描かれているサクラはすべてヤマザクラなのだが、国民が国花だと認めているサクラは何サクラだろうか?きっと華やかなソメイヨシノなのだろう、と思う。言っておくがサクラは国が正式に法律で国花と定めた物ではないということ。いつのころからか、日本の国花はサクラ、と謳われるようになった。ニュースでサクラの開花を予想するサクラ前線なるものを報道するのを見る度、平和な国だなあ、としみじみ感じていたのだが、今年は疫病の蔓延する春となり、サクラのニュースを見ても白けた感じがしてしまう。