鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

イヌシダ通信 麦国の混乱

イヌシダ通信社の昼下がり、伝書鳩ハト子の休憩中に隼タカオが足音荒く乱入した。続いて駝鳥タロウも入ってくる。自分の為に入れて飲もうとしていたコーヒーをタロウに横取りされて、ハト子眉をひそめたが、タカオがすばやく新しいのを入れてくれた。それを奪われないようにツバサで囲う。なにしろ駝鳥だ。コーヒーカップなどでは小さすぎる。こいつはバケツで飲ませていい加減だ、とハト子は思い、タカオも以心伝心、そうだ、と目で答えた。「どうしたのよ、タロウ、あんた麦国に行っていたのじゃなかったの?、タカオもそうでしょ?」麦国のコロナを取材に行ったところ、人種差別のデモ騒動に巻き込まれたから、予定の日に返れないと連絡があったのは5日前。「コロナで疲弊しているのにデモなんてね。それも暴動になっているじゃないの」「そうなんですよ、ハト子さん、もう、3密どころではありません。コロナに感染したくてやっているみたいで、カード大統領はカンカンです」タカオは自分のコーヒーを駝鳥に取られたが文句も言わず、麦国の説明に走る。「全国でデモが勃発しているんですけどね!」そこに駝鳥タロウが割り込む。「デモ自体はマシな連中がやっているんだけどね、その中に誰かに煽動されているらしきやつが混じっている。コロナの不平分子なんて可愛い者ではない。あれは麦国に恨みを持つ、他国の間者がやらせているとオレは思うな」穏やかでない考えだ。「他国って北夜濁国?」ハト子はわざと的外れの国を言ってみる。「いや、露国か上国だ。2つとも麦国、特にカード大統領には並々ならぬ恨みがある。コロナに振り回されている国だし、どちらもマフィアを持っているから、揉め事が起こったとき煽動させる人間には事欠かない」タロウはまたタカオのコーヒーを略奪しようと手を伸ばしたが、こんどはツバサでパシッと叩かれた!「次は頭に穴を空けますからね!」ハヤブサの口ばしは鋭い。なにしろ猛禽である。「バケツに入れてあげようか?」とハト子が仲裁だ。「オレの専用カップを取って来る」席を立った駝鳥の椅子にハヤブサが腰を掛けた。「僕はタロウさんと出張するのはゴメンです。編集長に言って下さい。あのヒトは一緒になってデモに参加しかねません。今度、上国の匂海デモの取材に行けと言われたら断りますから」匂海は上国の半分独立した一国二制度を行っている島で、揉め事の絶えない所である。上国主席の遠角は気が休まらないだろう。そのうち兵を動かしてデモ隊を戦車で踏んづけそうだ。「わかった、わかった、次はコウノトリ嘴子と行って貰うわ。で、コロナ感染はどうなの?少しは収まりそうかしら?」するとハヤブサはクビを横に振った。「もうすぐ感染者が200万人になります。死者も10万人を超して、もう麦国は国全体がヒステリー状態ですよ。上国に付け込まれるのも無理はありません」「オレはもう一度麦国へ行くぜ、あのデモの過激ぶりは絶対おかしい!」バケツ顔負けの巨大な自分専用カップを持って戻ってきたタロウが、自信たっぷりに言った!