鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

致死率100パーセント

地球上の動植物は、それぞれが我が母星に誕生したころからウイルスに囲まれている。電子顕微鏡でないと見ることができない、微小なウイルスという物。DNAがあるから生き物になるのだろうが、いったい何という存在なのかわからない。ヒトや動植物にとっては迷惑なお方だということは確かだが、有益な存在でもあるのだろうか?専門家ではないのでわからないが、コワイ存在のウイルスが多いことはわかる。

以前、イヌを飼っていた。兄に押し付けられて飼い始めた紀州犬の雑種で、家に来た時は13歳になっていて老犬だったが、真っ白の体に鼻だけピンク、目は黒くて男前なワンコだった。普通の紀州より少し大きく陽気な性格で、西側の台所の窓下に犬小屋を置いて飼った。イヌを飼うと時おり獣医さんの世話になるが、必ず紀州犬と書かれる。雑種だと前置きしてあるが、ほぼ紀州犬の血を受け継いでいたようだからなのか、センセーが飼い主に忖度していたからか、とにかく彼は紀州犬で通った。老犬なのに毛並みはツヤツヤと美しく、あまり吠えないでいつもリンとしていた。イヌを飼い始めたことを市役所に届けておいたら、春に狂犬病の予防接種を受けるよう、市から案内が来る。面倒だが飼い主が代表で行くわけにはいかず、必ずワンコ本犬が出頭せねばならない。幸い近くの体育館前で当番の獣医師が待機してくれるので、時間内に連れて行く。雨が降ろうが矢が降ろうが行かないと、今度は動物病院まで行く羽目になる!

狂犬病はすべての哺乳類に罹患する、しかも罹れば致死率100パーセントという恐ろしい病気である。新型コロナなど足元にも寄れない病気だが、幸いワクチンがあり救われた。100年以上前、フランスのパスツールが作り出したワクチン。コロナ(コビット19)と大きく異なる状況だ。これのおかげで世の愛犬家は大きな顔をしてイヌを飼えるのである。ワクチン接種が行き渡っているため、長く日本では狂犬病の発生を見ていないが、数年前、フィリピンから戻ってきた男性が、あちらでイヌに咬まれて帰国後に狂犬病を発症した。ニュースで知って随分驚いたが、外国では珍しくないらしい。今でも毎年5万人が死亡すると聞いた。ほとんどがアジアやアフリカの発症だとのことだが、旅行で出かける方々は注意した方が良い!現地で動物に手を出すのは、非常に危険で、特に動物好きのヒトは要注意である。咬まれて万が一狂犬病ウイルスに罹患しても、潜伏期間が2週間から6週間と長いので、咬まれた傷が治ってしまい、発症しても病名がわからないことが多いようだ。まあ、発症したらアウトなのだが。致死率100パーセント、特効薬はなし!しかも大変な苦しみようで、ペットが発症ならば安楽死を勧められるだろう?しかし発症前ならワクチンを打てば効力を発揮してもらえ助かる。だから危なそうな国に旅行するなら狂犬病のワクチンを絶対に打ってから出かける方が良い。対象はすべての哺乳類だから、旅行先でサルだのリスだのに咬まれても危ない。来日する旅行者が日本で発症することもあるそうで、その罹患者に咬まれたりすれば移るという。日本では関係ない!という話ではないのだ。

イヌを連れて体育館前まで行った。申込書とカネもいる。何をしに連れて行かれるのかも知らず、喜びいさんで飼い主の前を歩くが、近づいて来るとワンワン、キャンキャンとただならぬ声だ。大きな図体をしているくせに、キャワワワーン、と悲鳴を上げているイヌがいる。「まだ打っていないよ!」とセンセーは苦笑いだ。どこのイヌだ!恥ずかしい!我が家のイヌはお尻にブスッと注射器を突き刺されたが、フン!と横を向いたまま、意地でも鳴くか、といった態度で、飼い主の鼻を高くさせてくれた!彼はその後17歳まで生きて最後は玄関のヒーターの上で、老犬介護をさせられることになったが、思い出深いイヌである。