鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

タマシダ

タマシダを作っている。三年前にシダ愛好家からいただいた日本産のシダで、雪が沢山降る我が地方でも外で冬越し可能な良い子ちゃんである。園芸店に行くと吊り鉢などに入れて売ってあるが、ほとんどはセイヨウタマシダで寒さに弱い。外なんかに置くと枯れてしまうし、屋内でも5度以下だと越冬できない。美しさだって日本産の方がキレイだ。少し硬めの葉だが、シュッと立ち上がるように伸びてリンとした風情が何とも言えない。このタマシダ、日本でも南部の九州方面、四国、静岡、紀伊半島あたりに自生する。いかにもシダっという感じのシダで、吊り鉢植え、石付け、鉢植えなどなんでもござれの育てやすいシダだ。初心者に持って来いの物だと思う。ただ、少々殖えすぎるのが玉にキズ!今から15年ほど前、タマシダをもらい、プラスチックの大きな平鉢で作ったことがあった。平鉢といっても直径が40センチほどある巨大な鉢で、それに軽石鹿沼土腐葉土などを混ぜて半日陰で大切に育てた。すると、三か月ほどして鉢になじんできた頃から葉の数が増えだし、根元からタコ糸みたいな太いシュートがどんどん出てきて、鉢から乗り上げだした。そして近くの鉢に侵入し土に閊えたら根を出し芽を出す。シュートは一つの株から何本も出るので、そいつの先端が全部新しい株になる。とうとう巨大な鉢がタマシダでいっぱいになってしまった。仕方がないので株を取り分けてポットに移し、山野草展などの即売で売ったりヒトに上げたりした。しかしすぐに親の鉢は一杯になる。驚いたことにシュートの途中に玉が付いているのを見つけた。それでタマシダというらしい。これも、土の中に入ったシュートに必ずいくつか付いていて、そいつが又、芽を出すのだ!株自体も殖えて大きくなるので、分けようと思えば分けられる。それから、育った葉のてっぺんあたりには胞子がつく。こいつが撒き散らされたら、その殖え方は尋常ではない!つまり、このタマちゃんは株にシュートに玉、胞子とものすごい繁殖力で殖えはびこるシダなのだ。自生地ではないから、胞子では殖えなかったが、大鉢から他所の鉢に侵入を繰り返し、すっかり手に余り、とうとうヒトに上げてしまった。苦い経験のシダであった。

ところが、別の愛好家からいただいてしまったのだ。今度のは斑入りの珍品だったが、性質は同じだ。以前のことを思い出し、うれしいような悲しいような?仕方ないので25センチほどの平鉢に入れて作り始めたが、1年もすると、同じようなことになりだした。夏に溝の傍で他の鉢に侵入していて、知らずに持ち上げて別の連中がいくつもくっついて宙づりになった。あわててハサミでチョキンと切り離したが、それ以来シュートの先は切ってしまうことにしている。怪物のようなシダである!