鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

腹の立つヒヨドリ

ヒヨドリは人懐こいところのある野鳥だが、図々しくて腹が立つこともある。家の周りには色々な野鳥がいて、トリが好きな者には楽しいところだ。しかし、せっかく作ったものを台無しにされてはたまらない。知り合いの農家からもらった渋柿の皮をむいて、10個ほどを二階のベランダに吊り下げた。甘くて美味しい吊るし柿を楽しみに、指折り数えて正月を待つ。童謡の文句ではないが、そのころには吊るした干し柿が出来上がるはずだった。ところが何日おきかに二階に上がって柿の状態を覗き、頭にクエッションマークが灯る。柿が一つ足りない気がしたのだ。へんだな、と思いながら深く考えずに下へ降りた。柿は毎日調べに上がったわけではないが、一つ二つと減っていき、一週間見に上がらなかったら一個だけになっていた!これはおかしい。サルでも来たか?それならいっぺんに取っていきそうなものだ、と窓を開けずに部屋の中から恨めしく柿をながめていると、犯人がやってきた!ヒヨドリだ!そいつは器用に柿を吊り下げていた縄にしがみついて、もうすっかり甘くなっているだろう吊るし柿をつつきだした。そういえば、ヒヨドリは果物が好物なのだ。これはうっかりしていたが、まさか野鳥に吊るし柿を食べられるなど思いもしない。吊るし柿はこれに懲りて、もう作らなかったが、鉢植えにしていたビワを食べられてしまった時は、大いに腹がたった。

友人に讃美歌の弾き方を教えてあげたのだが、そのお礼に何かしたいので欲しい物を教えてくれと言われた。ではビワの苗が欲しい、と言うと3日後に園芸店から買ってきたタナカビワの接ぎ木苗が届けられた。指くらいの太さの立派な苗木だ。大きな植木鉢を探し出して植えこんだ。植えて一年もしない間に実を二つ付けてくれる。期待していなかったが、二個の実はどんどん大きくなって6月には立派に食べられるほどになってくれた。食べてみると甘くて美味しい。大感激である。ビワは毎年大きくなりながら実を付けて、三年後には10個もなった。玄関の前に置いていたビワがヒヨドリに見つかって、10個のビワを収穫前に全部食べられたのは苦い思い出だ。そのころビワの木は1m50センチほどになっていた。鉢ももっと大きくして直径50センチほどのプラ鉢に入れていた。それを引きずって裏のカーポートへ避難させた。これ以上好きにさせるか、と思ったのだ。カーポートは隣の家の壁から1mくらい離れていたが屋根は母屋の壁にくっつけて傾斜させてある。雨が当たるか当たらないか、という微妙な場所にビワを置いた。夏は毎日水やりをして肥料もたっぷり与えた。その場所でビワが50個生った。20個を間引いて30個だけを育てる。せっせと世話をしたので30個とも立派な実になり、食べてみるととても美味しかった。半分をお隣さんに食べてもらう。ビワは年々実の数を増やしてくれたのだが、しかし、数年後にとうとう見つかってしまった。ヒヨドリだ!見つかったらもう実に袋をかけるより方法がない。だが、面倒くさい。そのままにしておくと、せっかく生らせた実を複数でやってきたヒヨドリに全部食べられた。トリに食べさせるために作っているんじゃないわ!ビワに対する熱意はとっくに冷めてしまい、畑を持っている山野草の友人に鉢ごと上げてしまった。思えば、玄関前に富有柿を作ったがトリに食べられた。イチジクも大鉢で植えたが、実をやられた。ビワは長く楽しませてくれたのだから、良しとせねばならないか?ナンテンピラカンサの実を食べてしまうトリもヒヨなのか?