鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

ツタバウンラン

我が家の北側には側溝がある。大川から水が引かれている農業用水で、防火用水でもあった。だから農家の都合で時おり水が止められてしまい、こんな時に火事がおこったら役に立たない用水だが、今は消火栓が張り巡らされているので文句は言わない。その側溝に沿って路地があり車は通れないが、たまにチャリンコ暴走族が走り抜けて、危ないじゃないか、側溝に落ちろ、と心の中で毒づく。それが効いて側溝に車輪を突っ込む者はけっこういた。ほとんど小学生か中学生だ。小学生低学年の登下校路になっていて、彼らは行儀よく並んで通るのに、成長するにあたって非常識な人間に変貌していくのはなぜだろうか?そのけっこう往来の激しい路地に、去年あたりから見たことのない植物を目にするようになった。二センチ強の五角形みたいな葉をつけた一見華奢な植物が、路地の端っこに生えたのだが、すぐにあちらこちらに種を飛ばして、しかも親株はツルを伸ばしてドンドンのさばっていく。石垣にも取りついてその増え方はなかなかの物だ。コロナの変異株どころではない。いつの間にか家の前の路地にまで進出していた。しかし、引っこ抜かなかったのは、その植物がとても上品でしかも可愛い薄紫の花をたくさん付けながら這っていくのが、大いに魅力的だったからだ!花だけ見ると、その辺にたくさんあるトキワハゼという雑草にそっくりだった。だがトキワハゼはツルを出したりしない。それに一年草だ。このツル性植物は雪の中でもへっちゃらで、それどころか台風シーズンになったら側溝が溢れること日常茶飯事なのに、水をかぶっても枯れたりしない。かなり図々しいお方だ。石垣を覆うように浸食した株は一面に花を付けて、グランドカバーの資格が十分にある。たぶん上流から種が流れてきて、大水が引いたときに取りついたのだろう。何という植物なのだろうか?
植物図鑑を引っ張り出して探してみた。昔買った保育社の本で5巻まであるうちの第1巻草本を探してみたが、ない!草本は3巻まである。全部探したが載っていなかった。仕方がない、頼りはインターネットだ。名前がわからないので、サギゴケに似た花のツル性植物、と打って検索してみた。するとネットの情報網はすごい!探し当ててくれたのだ。写真も出ている。間違いない!彼の名はツタバウンランゴマノハグサ科だと思ったがそれは以前の話で、今はオオバコ科に入るらしい。別名ツタカラクサ、またはウンランカヅラという。ヨーロッパ原産の帰化植物で初め北海道に帰化してから本州に南下したそうだ。まだ新しい帰化植物なのだろう。植物図鑑に載っていないのだから。この花の可愛らしさから、もしかしたら園芸植物として持ち込まれたのかもしれない。今、ヒメミゾソバがこの近辺を侵食しているが、それを凌駕しそうな勢いである。