鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

初音ミクが歌う讃美歌

新生の歌という讃美歌集に、いともかしこし、という曲がある。教えてもらったのはフィンランド宣教師の先生で、彼は私が行っている教会を起こした方だ。諸人こぞりてしか知らない新米の求道者に、色々な曲を教えては礼拝で歌わせた。先生は足ふみオルガンを弾いて讃美歌の伴奏をされ、講壇の上でメッセージと忙しく、新生の歌は難しかったので大変だったと思う。ある時、好きな讃美歌をそれぞれ書いてください、次の礼拝に使いますから、とおっしゃる。だから、一番好きだった、いともかしこし、を書いたのだが、待てど暮らせど、この曲が礼拝に使われることはなかった。他の信徒や求道者のリクエスト曲は順番に使われたのに、なんでだ?先生が亡くなられた今でもわからなかったのだが、最近に新しく新生の歌の楽譜を買った。教えてもらった時はコピー譜だったので、譜面は長い年月の間にどっかへ行ってしまっていた。購入する機会に恵まれて手に入れたが、いともかしこし、はフラットが四個もある弾きにくい曲なのに気が付いた。先生ははっきり言ってオルガンは自己流で下手くそだった。フラット四個は手に負えない曲らしかった。教えて下さった時は片手でメロディだけ弾いておられた気がする。新しく譜面を手に入れて、いともかしこし、がなつかしく、先生の面影がちらついた。ユーチューブで上手なヒトの歌を聴いてみたいものだと思い、ネットで動画を探す。教会の信徒による合唱や独唱が次々に現れる。いくつか同じ歌手の名が並ぶので、この初音ミクという歌手はよほど上手いのか?どうやらプロのようだが。それをクリックしてみる。

可愛いアニメの少女が画面に現れて、歌が始まる。「いともかしこし、イエスのめぐみ、罪に死にたる身をも生かす、主よりたまわるあめのかてに、飢えし心も飽き足らいぬ、世にある限り、君の栄といつくしみとを、語り伝えん」少女の声は美しく透き通って、音程がぶれることもなく、実に素晴らしい!この世にこんなきれいな声を出すニンゲンがいたのか、というほどの歌である。天使の歌声、とはこういう声では、と感激する。三番まで聴いてしまった。ミクの歌は三番まで進んでも初めと全く一緒!まるで判を付いたかのように同じ歌いまわしだった。美しい歌声には感激したが、動画を閉じてから、何かおかしい、と心がささやく。あまりにも機械的な歌声に違和感が募った。初音ミクで検索すると、ページにずらりと記事が並ぶ。ミクの声はコンピューターが作り上げた人工の声だった。なるほど、美しくうまいだけではヒトの心を納得させられないのだ。少々下手でも心を込めて歌った讃美歌に神様は扇を広げられる。