金持ちの知り合いがいる。子供は二人で一人は所帯を持っており一人は都会で介護職員をしていて心配のない行く末である。だが二人ともめったに母親の所へは戻ってこない。盆と正月の年二回だ。家は大きいので十分ゆっくりできる広さなのに、なぜだろうと思っていた。母親は一人暮らしでそろそろ80の大台に乗る。心配ではないのか、とよそ様のことだが気にしてあげる。所帯持ちの長男は仕事の都合上なかなか戻れないらしいが、妹の方は一応休日が決まっているので帰郷はできるようだ。長男は車で里帰りが可能だが、妹は運転ができないので、電車で戻ってくる。駅から家まではざっと8キロ、母親はうきうきと駅まで迎えに行き、帰るときは送っていく。いたれりつくせりだ。たまにはタクシーを使わせたら、と言ったが、余計なお世話だという顔をされた。家は繁華街からも10キロ近く離れており、まわりは田んぼに囲まれた何もない地域ではなはだ便利の悪い場所である。幼稚園と小学校はわりと近くにあるが、とにかく店がないし医者もいない。住み着いたころは若かったし近くに個人商店が数件はあったが、高齢化により個人商店は次々に消えた。車が使えないと全くの陸の孤島だ。乗り合いバスは通っているが、国道のバス停まで歩いて10分ほどかかるし、やって来るバスは1時間に1本。車を使えない娘がなかなか里帰りをしてくれない理由がわかるというもの。戻っても買い物に行くのにいちいち後期高齢者の母親を頼らねばならないのだ。おまけに母親は超がつくケチで、家の中に遊べるものなどなにもない。ゲーム機もブルーレイレコーダーもなくて、家に居ても面白くないことこの上ない。しかし、娘も親に似て渋ちんなようで、遊ぶ道具を持って帰ったりはしないようだ。母親は新聞を引いていないし本や雑誌のたぐいもないらしい。まるっきり退屈でつまらない家である。テレビはあるが、録画の機械がないから、娘の喜びそうな映画や番組を録画しておいてやるようなこともできなかった。母親の携帯はガラケーである。パソコンは使えないので置いていない。ニュースはテレビのニュース番組が頼りだが、一日中ニュースを見ているわけにはいかないので、新聞からもネットからも情報が入らない。娘は戻ったと思ったらすぐ帰ってしまうし、長男が寄り付かないわけもわかった。新聞を引かないのは新聞代が高いからだし、情報が取りやすい携帯電話をスマホにしないでガラケーにしているのも、やはり使用する代金が高くつくかららしい。だから、たまに会って話をしても、本当に会話が通じなくてあきれる。新聞を引いたら?情報難民になるよ!(もう、なっているけど)一人で暮らしていて倒れても誰も気が付いてくれないから、新聞は役に立ちます。たくさんポストに溜まっていたら配達人がおかしいと思ってくれるから。と忠告をしたのだが、これも大きなお世話、と言われた。家の中で死んだりして、長いこと見つけてもらえなかったら、子どもさんが困るでしょ、と意見を述べたが、子どもはどうなっとする、とのたまう。家が事故物件になって、のちのち売れなくて困りますよ。と、またいらんことを言ったので、知り合いは大いに機嫌を悪くした!