鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

恩師が召される!

クリスチャンへと導いてくれたフィンランド人の宣教師が,先日、天へ召された!出戻ってきて毎日落ち込んでいた私を導いた恩師である。彼は当時40代で元気はつらつ、子供が五人もいた。日本へ来て15年以上になるとかで、キリストの福音を伝えるのには十分な日本語を話したが、中学生になっていた長男や長女にはかなわない。時々意味不明な日本語が飛び出したのは、まあ仕方が無い。すらりと長身でブルネットの髪に砂色の目をした、いかにも北欧のヒトといった超イケメン先生だった。保険会社でアルバイトをしていた所に、先生が日本人のアシスタントを連れてやって来たのだ。保険会社は日本の大手で、4時には終了する。帰宅までにお茶をのんでいたところだった。少し聖書の話をしても良いか、と言われ、所長が、もう皆帰るので30分くらいなら、と了承する。福音ルーテル教会という宗教団体から来たそうで、彼は下手くそな日本語で聖書の話をしてくれた。私の前に立ち、特別丁寧に話された気がする。浮かない顔をしていたので信仰が必要だ、と思ったのか?聖書のことは少しは知っていたが、それはアメリカ映画で色々見たからだった。そこにいた数人の保険外交員も似たようなものだろう。先生はきっちり30分で事務所を出て行って、私も家に帰る為にそこを出る。家は歩いて5分の近場だ。帰ったら花に水やりをしよう、と足を速める。

春も終わろうとしていて、毎日の水やりが欠かせない季節になる。家は、あと10年は持つ、と大家のお墨付きで借りていたのを買い取ったボロ屋だ。敷地は30坪。平屋の二間にトイレ、風呂、台所の貧乏ったらしい家だったが、雨風は凌げた。しかし、一度台所にヘビが入ってきていて、ガス台の上にとぐろを巻いていたので大ビックリした。壁に穴が開いていて、そこから入って来たらしい。追い出すのに骨が折れた。腹のたつヘビだ!ボロ屋具合がよくわかるエピソードだった。そこに戻って水やりをしていると、なんと先ほど事務所を訪ねてきた外人の牧師さんが、アシスタントと二人で通りがかったのである。「おやおや、先ほどお会いしましたね」としばらく立ち話をしてから「二度もお会いしたのも何かの縁、中でお茶でも飲みませんか?」と誘った。二人はヒトを宗教に勧誘するのが仕事だ。では遠慮なく、と家に入ってきた。買い取った頃は畳はボロボロ、天井は落ちそうになっていて、覗いて一瞬怯んだものだが、リフォームはしたから、先生が座っても畳は抜けない。「教会に日本人の偉い牧師先生が来て講演をするので、ぜひ聴きに来てください」と勧められた。教会は保険会社の事務所に近い。川の反対側で我が家からも歩いて7分ほどだ。行かせてもらいます。と答えた。恩師との出会いである。教会と知り合いになって、初めチョコチョコ、そのうちたびたびと教会に行くようになった。先生に釣りあげられて2年ほどしてから洗礼を受けた。先生は宣教師だから、立ち上げた教会が軌道に乗ると、次の町へ変わらねばならない。そして宣教師の代わりに日本人の牧師先生が赴任してきた。宣教師先生が播いた種は次々に芽を出して、信徒が増える。私は讃美歌の伴奏をする奏楽者になっていた。月日が経って牧師先生も10年くらいで別の方と交代する。宣教師の恩師は年を重ね、本国へ帰国された。今はメールなどが普及して、便利な世の中になったが、恩師が天に召された、というメールが教会に入り、それが信徒たちに配信された。脳梗塞で亡くなったそうで82歳とのこと。もう、そんなに歳を取っておられたか、と自分の歳を考えずに思ってしまった。先生、ゆっくり休んで下さい!