オシャグジデンダというシダがある。変わった名前だが、オシャグジという寺があるのかも、とも思ったりする。イワデンダに似ているが、オシャグジデンダの方が気難しさは何倍も大きく、採って来ては失敗の連続だった。わが町のはずれにそびえたつ1100mほどの山があり中腹に重要文化財の神社がある。拝殿や奥殿は数年前に国指定となったが、境内の入り口付近に建つ三重塔は昔から国指定の重文だった。その神社から4キロほど下ったところにN院という寺があり、ここの山門をくぐった敷地に色々なシダが自生している。シダ愛好家にとっては宝の山だ。ここにはオシャグジデンダがたくさんあって、ケヤキの大木、狛犬のコケ、石垣に至るまでそれがくっついている。そっとはぎ取って帰っては、鉢に植えて失敗する。市内の南むきに走ると1500mの高山が控えていて、やっぱり神社や寺の境内にオシャグジデンダが群生している。塊が地面に落ちて転がっていたりするので、喜んで持ち帰るが、うまく行ったためしがない。何度も失敗して、何が悪かったのか反省してみた。鉢植えの土を色々変えてミズゴケなどにも植えてみたが、たぶん水やりの調整や空中湿度の具合がオシャグジさまのお気に召さなかったのだろう。何度も自生地からむしってきたが、考えてみればほとんどの株は高い所にある。鉢に植えて棚に置かれ乾いた風にさらされるのなど、まっぴらごめんなシダのはずなのに気が付いた。そこで流木にミズゴケを噛まして巻き付け、遮光ネットの下に吊り下げてみた。それがお気に召したようである。オシャグジデンダは少しずつ葉を殖やして、初夏から8月下旬まで休眠に入り葉を落とすが9月になったらフユノハナワラビと相談したかのように、同時に休眠から目覚めて新葉を出してくれた。自生している状態になるべく近い方法で栽培するのが良いのに、面倒なものだからつい手軽な鉢植えにしようとする。それのほうが何倍も難しいのに、懲りないニンゲンだった!写真は流木植えにして15年以上経つ、N院境内の頑張っている株である。