鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

シンビジウム

去年の11月初め、近所の同級生からシンビジウムを株分けしてもらった。下垂性の小輪花を密に付ける白花だが、大鉢に入っていて株を分けた方が良さそうな代物だったので、株分けをしたら欲しいと頼んでおいたのだ。てっきり春の花後に分けるのだと思っていた。まさか晩秋、冬の兆しが表れ始めた時に株分けするなんて!鎌かなにかでズバンと切ったらしい。驚いたことに植え込み材料は鹿沼土だった。根は少し腐っていたが植え替えれば回復しそうだ。株は3個ついておりそれぞれに尖った芽がいくつか顔を出していた。どうやら花芽みたいだ!ラッキー!分けてくれた同級生は花が大好き人間で家の周りに、世話が困りそうなほど作っている。今は特に洋ランに力を入れていて、シンビジウムも大株が10鉢以上あった。冬は西向きの応接間に並べているらしい。もちろん無加温だ。ミニカトレアやオンシジウム、キンギアナム、などは居間の窓辺に置いているが、こちらも加温などのサービスはしないとのこと。私のとこの巨大輪カトレアは一日中暖房完備で、夜は充電式湯たんぽを入れてもらうのに。もっとも無加温だと大型カトレアは冬越しできない。シンビジウムも日本に入ってきた頃は温室に入れないと越冬できなかった。当時は花だけでも高価で、デパートの花売り場では一輪が400円もした。一輪である。花茎一本ではない。バラした花が一個のことだ。その頃私の給料はひと月1万円だった。大きな花で、今ごろのアンミツヒメなどより大きくマリリンモンローくらいの大きさがあった。最近は園芸家の努力もあって、きれいに揃った花が出回る。しかも温室に入れなくても、玄関の中に入れておけば立派に冬越しして、4月頃には開花してくれる。とても丈夫になったわけは、おそらく日本産のシンビジウムであるシュンランなどと交配して、寒さに強い品種を作り出したからだろう。シュンランは山野草愛好家の中でも人気が高い花だ。都会の近くの里山では乱獲されて、全く姿が見られなくなったと聞いた。それどころか、玄関の前にシュンランの鉢植えを置いておいたら盗まれてしまった、と新聞の投書に出ていて呆れる。端正込めて作っていたのに落胆した旨が書かれていて、気の毒だったのでこちらの里山から引っこ抜いてきた株を送って上げたい、と新聞社にハガキを出したら返事が来た。先方がぜひ頂きたい、とのこと、で住所が書いてある。同じ県の南部の方だった。郵便で送って上げたら、大層喜んで礼にとろろ昆布の詰め合わせを頂いてしまった。高いシュンランだ!採ってきた里山は歩いて5分。シュンランがたくさん自生している。キンランも見たことがあったしサイハイランもある。上の方に登ればナツハゼやコウヤボウキ、コメガヤなど山野草が多い山なのだ。都会からは随分離れているド田舎なので、あまり荒らされないのだと思う。同じシンビジウムでもシュンランの花は華麗さには程遠い。とても地味な花なのだが、中に赤花なんかがあり、これは一株5000円とか1万円くらいする。シンビジウムが何鉢も買えるくらい高価だ。交配に使う花は普通の1000円くらいの物だろう。何年もかけて交配して行き、寒さに強い物を作り出したに違いない。

もらった下垂性のシンビは台所の水槽の傍に置いた。昼間は15度以上あるので、根を痛められた株でも何とか行けるだろう。根元にレジ袋を巻き付けておいたのだが、水を与えるためにちょっと覗いて見たら、なんと芽が伸びて花が顔を出していた。暖かいので気を良くして花茎を伸ばしてきたみたいだ!この分だと来月には開花しそうだ!