鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

イヌシダ通信 首相が交代する!

イヌシダ通信社が慌ただしい!日本のニンゲン界総理大臣が退陣して別の者と交代するというのだ。当然、新聞、雑誌、ネットを束ねる編集部はニンゲンのメディア顔負けに忙しかった。テレビ部門から泣きつかれて、伝書鳩ハト子はしぶしぶニンゲンの友人である東田ルリ子を対談に引っ張り出す。勿論、収録はルリ子さんの自宅ではあったが。なにしろコロナ感染に注意するため、むやみに出かけないようにしているルリ子さんだ。自宅でいいなら受ける、ということで、イヌシダ通信社の機器がルリ子さんの部屋にセッティングされた。対談はルリ子さんと伝書鳩ハト子、若手のホープ、隼タカオである。

「この、コロナ危機で戦後最大の国難と言われている折、阿辺川首相が急きょ退陣をするなどと言い出しましたが、ルリ子さんはどう思われますか?ここは一つ、忌憚のないご意見を」とハト子、改まった口調で切り出す。「まあね、持病が悪化というワケだから、仕方がない、と言ったら、身も蓋もないわね。いいんじゃないの。支持率は落ちる一方、コロナの終息は見えず、オリンピックも中止という単語が見え隠れするし、経済はメチャクチャ、財政もコロナの終息が長引けば破綻しかねない。やりかけていた憲法改正拉致問題、領土問題、アメリカとの面倒くさい外交、その他問題山積み。持病が悪化しない方が不思議です。ここに、南海トラフ地震津波や首都直下地震、富士山噴火などが続けて起こったら、日本は沈没だわ!止めるなら今のうち!阿辺川さんはサラブレッドで穏やかな方ですから、平時なら十分名宰相として務まるでしょうが、今は本当に戦争よりもたちが悪い災難。よくぞ、後釜に名乗りを上げて下さる方がいると、私は感心しています」ルリ子さん、言いにくいことを鳥類メディアの代表イヌシダ通信社対談で言い切った。「鳥類には潰瘍性大腸炎なんて病気はないので、我々にはよくわからないのですが、難病だとか」隼タカオが口を出す。「実は私もそれの軽いのを持っています」「そうなんですか、ぼくは初耳ですが」わたしも、とハト子、うなづく。「お腹はしょっちゅう痛みますが、乳酸菌の食べ物を取るようにしてから、楽になりました。10年前は歩いていて痛みだし、帰ったら血便で下着が汚れたことがよくありました。それが、ヤクルトを飲みだしてからピタリと止んでね。他にもビオフェルミンやミヤリサン、ヨーグルトなど常用していますが、本当にヤクルトは良く効いたわ。宣伝するわけじゃないけど、さすがに球団を持っているはずね。ストレスがきついと、確かに悪化します。総理大臣なんて激務は命取り。いつも、よくやっていらっしゃるな、世界中を飛び回って、と思っていました」「悪化の原因はやはりコロナですか?」タカオはマイクを差し出しつつ訊ねる。「コロナ対応のまずさね。一生懸命やっているのに国民が認めてくれない。10年前に新型インフルエンザで感染症のコワサを経験していたのに、サーズもマーズも島国の日本には入らなかったので、ちょっといい気になっていた。エボラ出血熱なんかだったらどうなったやら。だから、経験のある韓国や台湾のように迅速な行動が取れず、国民と野党の集中砲火を浴びてしまう。こうなったらお坊ちゃまの総理は打たれ弱い感じです。取り巻きも、こりゃマズイ、と思ったでしょうね」ルリ子さんは気の毒そうに言う。「では、あなたは止めるのが潮時だと?」タカオのマイクがますます近くなる。「だから、都合よく持病が悪化されたでしょ、顔色が悪くてガンでも併発したかな、と思ったわ。わからないわよ、あの病気は大腸がんになったりするのだから。幸い、後任の候補者がたくさんいます。今は平時ではなくなりました。どさくさに紛れて、都合の悪いことは隠し蓋をする。後任がドジを踏めばすぐ交代させたらよいし、うまく立ち回ってそつなく総理の座を保てば、総裁本選のとき続けてやって貰えばよい。頑張って欲しいわね、この重大国難のおり。ワタシは後任の方にエールを送りたい!」ルリ子さん、扇子を振りそうな勢いだ。タカオとハト子はうなづくばかり!