鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

イヌシダ通信 危険な独裁超大国

イヌシダ通信社に麦国からの客が来訪。急なことで誰も出払っていて伝書鳩ハト子とコウノトリ嘴子が応対である。客は白頭鷲バルド。彼は日本のニンゲン界総理が交代するというので麦国鳥類メディアの代表で、こっそり日本の様子を窺って来いという指令を受けたらしい。「まだ、ほぼ決まってはいる候補者がいるとはいえ、就任したわけではないのに、気が早いですね」ハト子、あきれ顔で言う。「それはそうなのですが、麦国も大統領選が近いですから、少々気が立っていましてね。なにしろカード大統領は、ちょっとばかし旗色が悪いので」「でも、巻き返していると聞きましたよ。カード氏はいざとなったら手段を選びませんから、今、世界は非常時ですし麦国は最たるもの。こういう時はカード氏のような、ある程度非常識なリーダーのほうが良いのかもしれませんよ」麦国の派遣記者をやらされていたコウノトリ嘴子が、コーヒーを出しながら言う。「まあ、それもそうなのですが、彼の場合ある程度、なんてカワイイものではありません。非常識の代表みたいなニンゲンで」バルド、自国の大統領なのに庇わない。「彼が再選されれば、上国と気違いじみた貿易戦争が、下手をすれば本物の戦争に発展しかねないわね。上国の指導者は今や独裁者、国民をAIの元に監視下におき、都合の悪い物は粛清です。彼は上国の世界制覇を画策しているように思えます。貧しかった50年前は国民一丸となって、政府の指導の下に頑張った。この辺は終戦後の日本と似ていますが、異なるのは自国で製作せず他国の良いものをそっくりパクッて同じものを最安値で世界に売り出した。人件費の安さに目が眩み世界中の国々が工場をつくるなど進出した。上国はあっという間にカネのある超大国にのし上がり、いまや彼の国に対抗できる所はありません。麦国だって経済1位とうそぶいていますが、実態は上国の方が上です。人口比が承知しない。そのうち麦国のダラーから上国の玄紙幣に為替の頂点が交代よ!カード大統領はそれを恐れていると思う。まあ、ダラーは世界の基軸通貨なので、いったい何憶ダラーがバラまかれているのやらわからないけど。今のうちに金本位制に戻す方が良いかもね」ハト子の意見は辛辣である。「上国は金を買い集めているって、ネットで見たことがある。上国の上流階級の人間はたくさんいて、1000万人は億万長者で、彼らは金が大好きなんだそうよ」嘴子、そう言って自分のネックレスを口ばしで指し示す。それは18金のネックレスだ。ボーイフレンドに買って貰ったという。「今、金はコロナの影響でうなぎ上りに高くなっています。3年前は4000円台でしたが、今や7000円を越しています。たった今、8000円になるでしょう」バルドは麦国でも金持ちは金を買いあさっていると言った。「上国はカネに飽かせて、防衛費、貧しい新興国を誑かす費用、コロナ対策での世界頂点、など手段を選ばず世界制覇の準備を着々と進めているのです。カード大統領はそれを知っている。上国にカネを持たせてしまった危険性を!」バルドは深刻な顔をしている。「日本の護っている島々なんか夜陰に乗じて、あっと言う間に乗っ取られます。上国がまだその気になっていないからで、上陸するのは簡単ですからね。ボートでコソっと上陸し一晩で大きな要塞を作ることなどお手の物。いったん乗っ取られたらもう戦争でも起こして、強引に取り返すでもしない限りダメですから。南夜濁国の梅島が良い例です」バルドの意見はもっともすぎてハト子も嘴子も反論できなかった。「ですから次の日本のニンゲン界の総理大臣には世界中の国が注目するのですよ」バルドは次の総理に期待しているらしい。「上国は細菌兵器としてコロナを作ったのかもしれません。超危険な大国です!」おっしゃるとおりです、とハト子たちはうなづくより仕方ない!