鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

イヌシダ通信 芸能人とヤクザ

イヌシダ通信社の昼休み

伝書鳩ハト子、駝鳥タロウとうわさ話で盛り上がる。その内容は今、現在、巷で話題の芸能人とヤクザについてである。「ドシャブリ決死隊がヤクザの宴会に出て、こっそりギャラをもらっただの、もらわなかっただのでテレビや週刊誌を賑わせているけど、本当のところはどうなのかしら?」すると駝鳥タロウ、長い首を伸ばしてアクビをしてからフンと鼻で笑う。「もらったのに決まってる。誰がタダで愛想を振りまくよ。かりにも大物のプロがさ」「じゃ、ヤーさんだと知らなかったと言うのは?」「それも嘘だろ、だいたい昔からヤクザと芸能人は切っても切れない縁があるんだ。だから、凶本座の竹本社長がえらそーなことを言ったって、説得力がねーってんだ!」タロウ、テンションが上がってくる。「まあ、それはそうだけど。クビにするって息巻いているじゃないの」「まずいことを言ったな、あのおっさん。部下を庇わないであんなことを言って、他の社員が引けるじゃないか。社長の資格なし!話が拡大してとんでもない方向へ行っているぜ」タロウ、立派な羽を揺すり尾羽を広げた。「ちょっと収拾がつかないくらいになっているわね。第三者委員会を立ち上げよう、なんて言ってるけど」「苛め問題に右往左往する教育委員会も顔負けだな。小学校のPTAじゃねーっての」タロウの羽毛は羽飾りにしたいほど膨らんでいる。「凶本座は何千人も芸人や俳優、歌手などをかかえた大プロダクションよ、この問題を契機に改革をして、早く決着をつけてくれないと」ニンゲンって、本当に面倒くさい生き物なんだから、とハト子、ブツブツ言う。「まあ、そういうなって、オレたちのイヌシダ通信をいつも見てくれているのはニンゲンなんだから」「たしかにね、東田ルリ子さんなんか新聞、週刊誌、テレビと全部を見て下さっているのよ、そうそう、面白い話を聞かせてもらったわ」

昔、ルリ子さんが小学生の頃、町の映画館に神戸一郎という当時に大人気の歌手が来て、公演をやったそうだ。イケメンの歌手で、劇場に早変わりした映画館に観客が押し寄せて、超満員になった。蝶ネクタイの司会者が出てきて挨拶をしていると、いきなり、その筋もんらしきチンピラが客席からズカズカと舞台にあがり、司会者に向かって「誰に断ってこの興業をやっとるんじゃ、ああっ!」と怒鳴ったそうな。どうやら町の親分に挨拶が行ってなかったらしい。司会者はちょっと頭を下げてから、では、こちらへ、とチンピラを舞台の袖に連れて入ってしまった。しばらくして、司会者は何事もない様子で、舞台に出てきて申し訳ございません、少し手違いがありました模様で、と一礼してから、さあ、神戸一郎の歌をご堪能下さい、初めはリバイバル青い山脈でございます。と見事な司会ぶりである。最前列に陣取っていた楽団が演奏を初めて、公演が始まった。当時はカラオケもテープレコーダーもなかった。楽団を連れてくることができる芸能人はスターだったのだ。それができない者はせいぜいアコーディオン奏者一人を連れての公演だった。終戦後10年そこそこの話である。

「だから、芸能人とヤクザとの付き合いは古くからあるのよね」そうだな、とタロウうなづく。「オレは凶本座もヤーさんとの付き合いが、おそらく裏であると睨んでいる。この騒動を納めるためには、竹本社長の辞任しかないな」同感、とハト子も言った!