鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

子供のウイルス感染症

子供の頃、はしか(麻疹)にかかった。何十年も昔のことである。当時はワクチンなどなくて、はしかが流行れば免疫を持っていない者は大人でも感染して、子供などは移るのが当たり前の時代だった。はしかは空気感染が主で非常に感染力が強い。今の新型コロナどころではなく、致死率は10パーセント以上。感染の強さはインフルエンザの10倍だという。しかも特効薬はなし、マスクの効果も皆無。20年前の2000年では世界で50万人の死者が出たそうで、現在でも毎年9万人が死亡するらしい。そのコワイ病気にかかったのは小学6年生の時。 

はしかはだいたい子供の病気で、団塊の世代やそれ以前の日本人は、流行してご近所さんとか知り合いの子がかかったら、それっ、うちの子にも移してもらえ、とわざわざ傍に連れて行って感染させたりした。幼いうちにかかっておかないと、歳がいってからではひどいから、と大人たちは恐れたのだ。そのはしかに、なかなか罹らなかった。この子ははしかに罹らない、困ったことだ、と周りの大人たちが常々言う。大人は子供の時に大抵が感染していて免疫を持っていた。はしかは一度罹ると終生免疫を持つのだそうで、つまり死ぬまで免疫があるということだ。コロナはどうも、そこまでの免疫力がないらしいが? そのはしかにとうとう感染した。近所で流行っていたらしい。私がはしかに罹ったことは、たちまちのうちに近所中に知れ渡る!最初、学校から帰って、母親に「目がこそばゆい!」と告げた。すると母親は目の色を変えて「見せてみな」と子供の顎を持ち上げ、覗きこんで「はしかや!はしかに罹っているわ。病院の先生に電話して!」と騒ぎだした。その頃我が家には電話があった。ダイヤル式ではなく、ハンドルを回して交換手を呼び出し、番号を告げる式である。勿論、総合病院の小児科だ。小児科の先生がかかりつけ医で、頼めば往診をしてくれた。早速、布団に寝かされて、先生が自転車で黒い鞄を持ってやって来た。看護師など連れていない。一人だ。先生は患者を診て熱を測り,はしかです、と言う。薬をだしてくれたのかどうか覚えていない。だいたい薬なんかないのだから出しようがないというもの。「安静にしておくように」と言って先生は帰ったが、暴れたくても無理で、その夜、熱が出てきて体温計がグングン上がり、翌日には40度を越えた。その次の日は41度になり驚いた親が、また先生を呼びつけた。自転車でやってきた先生は聴診器で診察したあと「肺炎になりかけています。入院して下さい」と言う。車を出して病院まで運んでもらった。入院してしばらく後、体中に赤い発疹が気持ち悪いほど出まくって、痒くて痒くて困った。親はぐずる子供の看病でさらに困ったらしい。一週間入院して肺炎は治まったので退院したが、しばらく学校へ行くのは禁止、と言われて、本人は喜んだが、親は子供の勉強が遅れる、と焦った。兄がいたけれども、彼は4歳の時に罹っていたし他は大人ばかりで免疫がある者ばかり。免疫の偉大さには今でも感服する。

その後、はしかのワクチンができて現在の日本人はワクチン接種を受けているので、はしかにかかったことがない。その経験がないのは良いことだが、中に摂取をしていない方々がいるらしく、中学や高校になってから罹ったりして潜伏期間のまま欧米に出かけたりした。それらの国々からはしかの輸出国だ、と揶揄されたりしたのは、まだ新しいことである。ワクチンのおかげは種々の感染症に広がっているのだから、今回の新型コロナにも日本産ワクチンを大いに期待してしまう!