鳥と山野草の話

鳥類と山野草、主にシダ植物を書いたりします。

雑種フウランの藤娘

山野草界のホープ、風蘭。湿度の多い古木の高い枝に着生している風蘭は、昔から山野草愛好家の人気植物である。だが、近年は無計画な伐採が祟り、風蘭を見ることが少なくなった。いまや絶滅危惧種二類に該当する珍品なのだ!風蘭の銘品を冨貴蘭と言い、山採り並み葉の物と比べて、お値段の桁が違う。並みはヒトなら平民で冨貴蘭は王族や貴族だ。高価な物は百万円以上する。安い物でもン千円以上で、人気のある種ほど高くなる。どこが違うのかというと、花の形や色、葉の形や模様などで人気が異なってくる。収集を始めて間のない方はピンクの花を欲しがるが、それが手に入ると葉っぱの縁が白い覆輪葉を購入したくなる。次に変わった形の葉っぱなどが候補に挙がって来るのだが、お値段もそれに比例して高くなっていく。冨貴蘭収集は金食いだから止めておけ、と言いたい!それに、二年に一回植え替えをするが、近頃は良いミズゴケが手に入りにくくなった。高いミズゴケをネットで注文したが、届いたものは短かったり、消費期限を過ぎたものばかりで、使い物にならないようだ。ミズゴケは消費期限があるのでご注意を!採取して1年以内の物は良いが、しかし短いと冨貴蘭には使えない。最低でも10センチ、できれば15センチは欲しい。これらの品は良心的な業者から購入すると蘭以上に高くなったりする。私はいつも12月に仲間と高原の湿地帯に行って、採って来ていた。12月頃ならマムシはいなくなる。ミズゴケが採れる所は必ずマムシがいて、寒くなってからでないと危なくて仕方が無い。しかし最近はクマがウロウロしているので、あまりうれしくない。高原でなくわりと人里に近い山奥の谷川沿いにもオオミズゴケが群生してはいるが、こちらはヤマヒルがいる。いちど知らずに採取して連れて帰ったことがあった。塩を振りかけて退治したが、やっぱり寒くなってからでないとこちらもマズイ!そういうわけで冨貴蘭は植え込み材料を入手するのも中々である。多い時は80鉢ほど持っていたが、植え替えに難儀をして手放した。愛好家に貰っていただいた。今は10種ほどなのだがその10鉢を植え替えるためのミズゴケがない!園芸店やホームセンターに行っても、とても使い物にならないような代物ばかりだ。大方がゴミ混じりの短い三等品ばかりで、金返せと言いたくなる。しかし月日が経てば植え替えねばならない。とうとう一計を案じてその三等品に洋ランのバークを混ぜてみた。気に入らなければ枯れるかもしれないが、そうなったら諦める!バークはネオソフロンの大粒を使った。元は樹幹にくっついていたのだから、大丈夫かも、と半分バーク、半分を三等ミズゴケでまぜまぜして、素焼き鉢に植えこんだ。彼らは何とかバーク入りでも辛抱してくれたようで、初夏にそれぞれ花をつけてくれた。藤娘という銘品だけが毎年年末に花を咲かす。変わり種の品種だが、なぜ年末なのだろう、と調べてみたら、フジイランという台湾の着生蘭との交配種とのこと。フジイランは学名アスコセントラム・プミラムと言い、台湾の1000mから2000m級の高原にある常緑広葉樹林に産出する。台湾は戦前、日本が統治していたことで、おそらくフジイさんなる者が見つけて付けた名前ではなかろうか、と推測する。